愛人契約していた人に物やお金を返せと言われたら
2017/06/25
愛人契約をしていたけれども、他の好きな人が出来て愛人契約を解消して欲しいとお願いしたら、これまで払ったお金や物を返せと言われてしまった。
そんなドラマみたいなこと本当にあるの?と思うかもしれませんが、実は愛人契約のよくあるトラブルのひとつです。
ちょっと硬い話にもなりますが、法的な問題も含めて解説したいと思います。
不法原因給付につき返金請求は無効になる
結論から先に言えば、愛人契約の解消で、これまで払っていたお金や物を返せというのは、ほぼ不可能だとされています。
契約を破ったのだから、契約違反だろうと思うかもしれませんが、そもそもが愛人契約という契約そのものが、認められた契約ではありません。
愛人契約は公序良俗違反ですので、そもそも存在しない契約ということになります。
存在しない契約ということは、そもそもお金をもらう側が持っているはずのないお金ですから、やっぱり返金や返還しないといけないように思えますが、民法708条の不法原因給付の定めによって、物やお金を返す必要がないとなっています。
不法原因給付とは
それでは不法原因給付とはいったいなんなのでしょうか。民法708条にはこう書かれています。
「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。」
愛人契約に関しては、愛人契約そのものが公序良俗に反している不法な行為ですので、「それによって不利益が生じても、法律で守ることはしませんよ」ということになります。
例えば私的な賭け事の支払いなども、法律によって強制的な支払いを要求することはできませんし、負け分の返還を請求することも出来ません。
愛人契約のお金が支払われなくても請求できない
愛人契約したときの物やお金を返さなくていいというのは、払ってもらう側に有利なように感じますが、実は不法原因給付の考え方を適用すると、愛人契約で定めたお金を払ってもらえなくても、そのお金を請求することができないということでもあります。
違法な契約で収入を得るはずだったけど、お金が支払われないので払ってもらうために訴えても、当然そのお金を請求することができないのです。
そこで契約を解消して、それまでの支払いに関しては泣き寝入りするしかありません。
愛人契約と言われていますが、その契約は法律によって定められているわけでも、法律によって守られているわけでもありません。
むしろ法に反していることですので、裁かれてしまう可能性すらあります。
返すことができる範囲で返したほうがいい
法律的には返さなくてもいいんですが、現実的には返せるものはすべて返してしまったほうがよいかもしれません。
返還に対してすべて突っぱねたら、どのような強引な手段をとられるか分かりません。時には命の危険にさらされる可能性もあります。
使ってしまって返せないお金は無理だとしても、まだ手元にあるお金や物に関しては思い切って返してしまいましょう。
もちろん「法的には返す必要はないけど、申し訳ないから返せるものは返します」というスタンスは維持したほうがいいですね。
「法的には返す必要はない」というところがポイントでで、あくまでも立場はこちらが上だということを暗に主張しておきましょう。
その上で、「これまでの全額を返せ」などと言われないように、最初から釘を差しておくのです。
そしてお金も物もすべて手放してしまいましょう。
当面の生活費が必要場合は差し引いておいてもいいかもしれません。
愛人契約といえども、相手の立場になって誠意のある対応をすることが後々のトラブル回避につながります。
契約を解消する側が強気に出るから、相手が反発してくるのです。
返したい気持ちはあるけど、現実的にすべては返せない。
そのことを誠意を持って伝えて、返すことが出来る範囲で、ちゃんと返してあげましょう。
そのことできれいさっぱり縁を切れるなら、むしろ自ら返還を申し出るぐらいの気持ちでなければ、上手な終わらせ方はできないということを頭に入れておきましょう。